映像制作/USTREAM・IP配信会社のジーマ代表が、徒然なるままに書き綴る とりとめもない出来事、映像、映画業界のお話 http://ji-ma.tv/ http://ji-ma.jp/


by imao001

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劇評「羊と兵隊」

先日、岩松了演出の「羊と兵隊」を見た。
個人的なことだが本多劇場に足を運ぶのは大学時代以来およそ15年ぶりくらいになる。大学時代は下北にも足繁く通ったし、いろんな街で芝居も上演した。ところが卒業後は芝居から遠ざかっていたので、15年という月日に驚きはしたものの、それだけ足が遠のいていたとしても当然といえば当然だった。

さて、感傷に浸っていないで肝心のお芝居の中身の方である。
キャストに友人が出ている時は、普段は友人経由でチケットを取るのが普通なのだが、今回は観に行けるかどうか微妙なスケジュールだったのと、岩松演出にあまり興味がなかったこともあり、当初行かないつもりだった。ところが今回は別の友人経由でチケットが流れてきて、その上、楽日のマチネだったこともあり、“あら、お得だわ!”と、主婦的お得感を感じてしまい、やっぱり観に行くことにした。

内容の方ではあるが、初めての岩松作品ではあったものの台本による抵抗感などはなく楽しめた。
また俳優の演技やアンサンブルに関しても、最近見た小劇場の芝居の中で文句なく一級品だった。
しかしながら芝居が終わってみると何か腑に落ちない感があった。というより、腑に落ちない感で他の良さが全部失われたと思うほど。それはなぜか?帰りの食堂でよくよく考えるに、今、このご時世にチェーホフのごとき陰々滅々たる芝居を、それも時代背景を戦時中においてやる意味はあるのかが不思議だった。嗅覚鋭く、観客を放置してでも自身の選んだ台本、演出にこだわる演出家のわりには、今、演劇の世界で何が求められ、何を見せるべきかということに無神経のように思う。
芝居のスタイルや、形、演出の奇抜さありきで、つまらないお芝居が多い中、いわゆる新劇的な演技で、物語ることを超越しよう、物語に挑戦しようという気持ちは分からないではないのだが…
それにしてもとにかく『今見るべきお芝居ではない』というか、『今見ても面白いと思えないお芝居』だった。5年前、もしくは人々のたがが外れたバブル的な時代だったら楽しめたように思う。
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by imao001 | 2008-07-31 11:06 | レビュー
※以下、基本的に映画評論ではありますが、日記でもあるのできわめて個人的な事情や事柄、
  経験が文中に反映されることをご了承ください。
※また、全てにおいてネタバレはしないように心がけますが、ネタバレの可能性がある場合には
  しっかり明記しますのでそのつもりでご覧ください。
※最後に個人的にお金を払う価値があるかという、映画的ROI(投資対効果)を示しますので、
  見ようと思っている方なんかは参考にしてください。
※ちなみに勝手な計算式で『価値があったと思う金額÷払ったお金(たいてい入場料)』で表して
  いるので、たいてい1以上は個人的にまずまずと思っていただければと思います。


数年前、日航機墜落事故のその後を追ったドキュメント番組を制作したこともあり、当然興味があったので公開直後に見に行った映画である。

この『クライマーズ・ハイ』には、個人的にも因縁めいたものがある、というには大げさすぎるかもしれないが、なぜか不思議な縁があった。横山秀夫の原作は文庫化されてすぐ購入、一気に読み進めた。日航機が群馬に墜落した当時、群馬の地元紙 上毛新聞社(といっても地元紙なので当然のことながら群馬県内での発行部数は一番多い)の記者を務めていた作家だけあって、自身の経験が投影されたリアルな時代描写や、事故の重大さを伝える社内の息遣い、筆で描かれたような肉感のあるキャラクター像はクライマックスまで息もつかせぬストーリーだった。ところが、クライマックス、スクープをめぐるやり取りを読み進めている時、私の不注意で本を紛失してしまった(私はよく文庫本をジーンズの後ろポケットに入れて通勤時に読書することがあった)。よって、肝心の話のオチに辿り着く前に私の中で物語りは終了していた(私はこれもまた運命、と再度本を購入したりして読むことはしなかった)。その後、NHKでドラマ化されたこともありBSだったので、わざわざアシスタントに録画させDVDで鑑賞しようとした。待望のDVDを受け取り見ようとしたところ、これまた紛失。これはそういう運命なのか、とドラマ版を見ることもなく今日に至った。物語を、そして映像を見る機会があったにもかかわらず、なぜか肝心の部分を手元ですり抜けて行った様な気がする。そういったこともあり、公開直後、混雑を避け必ず観に行ってやろうと意気込んで劇場へと足を運んだ。

堤真一演じる山男の新聞記者 悠木が、同じく山男で同僚の親友と共に山へ登ろうと計画していたその前日、不運にも群馬県と長野県の県境にジャンボが墜落したとの共同電が入るところから話は動き出す。にわかにあわただしくなる社内、悠木は、因縁のワンマン社長の思惑によって、この航空機史上最悪の事故の全権デスクとなる。もちろん親友との登山などできるはずもなく、悠木は、この未曾有の大事故をめぐる、非常事態の新聞社、軋む人間関係、失われる命、事実、真実、様々な流れにダイブするかのごとく巻き込まれていった。と、ざっくり言えばストーリーはこう。監督は、硬派、スタイリッシュな演出と巧みな編集で評価の高い原田眞人。私自身『KAMIKAZE TAXI』以降の原田作品はハズレがないとも思っている。キャストは主演に堤真一、助演の記者役に堺雅人や尾野真千子(気が付けばとても大人)、遠藤憲一、田口トモロヲらを配するなどキャスティングディレクターのセンスの良さも伺える。

映画を見た全体の感触としては、ストーリーの運びが過去と現在の狭間でたまにもたつくものの、スピード感も悪くなく心地よく145分(長い!)を見終えられた。日航機墜落事故という大事故を扱ってはいるものの、中心にある大きなものは新聞社の中の人間模様だったりはするので、ことさら事故の悲惨さや、原因究明を訴えるようなこともない。いろんな意味でスッキリとはしている。とにかく、報道にたずさわる者から見ると新聞社内の些細な事柄も、経験したかのようなリアルさをもって迫ってくるだけに、組織の中の人間ドラマは息も詰まる思いだった。一方で、自身の作ったドキュメントは事故後20年という時期ではあったものの、改めて事故原因の検証などをすることもなく、遺族の20年をきわめて素直に切り取っただけだったので、“お涙頂戴”と揶揄する人もいたようだが、個人としては人の思いの深さを、命の尊さをとにかくストレートに伝えられたとおもう。そういう自身の映像制作の点も踏まえると、この映画は、個人的には映画足り得てはいたけれど、何か物足りなさもあった。ま、そもそも物語の視点というか向かうベクトルが違うから、なんら問題にすることではないのだけれど。なんにせよ映画としての完成度は高いので興味があれば是非ご鑑賞いただければと思います。

※4年ぶりくらいにパンフレットを買ってしまいました…たしか800円でしたが、中身スッカスカでした…

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映画『クライマーズ・ハイ』公式サイト

Excite 芸能ニュース:クライマーズ・ハイ
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by imao001 | 2008-07-30 20:41 | レビュー
モーガン・フリーマン演じる、真面目で家族思いの自動車整備工 カーターと、ジャック・ニコルソン演じる、病院経営などを手がけ、傲慢だがやり手の資産家 エドワードのふたりが同じ病室に入院するところから物語は始まる。

入院してしばらく二人共が深刻な病理に侵され余命いくばくもないを知る。医者の余命半年という宣告に、二人は悔いのない人生を送るため自身の人生の中でやり残したと思われる事柄を次々とリストアップし、実行に移してゆく…

原題が“The Bucket List (棺おけリスト) ”

まさに死ぬまでに悔いが残らないようやり遂げるリストを表しているのですが、実際の映画の中の二人が旅をはじめ、やり残したことを次々実行に移す様子は痛快活劇の如く、見ているものを爽快にさせます。二人は実際ハチャメチャな旅を楽しんでいくのですが、これがなかなかにテンポ良くサプライズもありつつ進行するので本当に気持ちがよく、とても人生最後を迎えようとしている人々には見えません。人生を謳歌したいと心底思っているアメリカ人だからこそ表現できる世界観ですね。

監督は「スタンド・バイ・ミー」などでおなじみ ロブ・ライナー監督(久々の登場)。おそらくは監督ご自身も劇中の主人公や、ジャック・ニコルソンやモーガン・フリーマンたちとおなじように人生の最後に近づきつつある年齢、だからこそ表現したかった内容だったのではないかと思います。

※最後で普通の人はたいてい気づかないのですが、脚本家や映画評論家の人々などロジックで映画を見ている人にとっては、最後に面白い驚きが待っているという、部分的にもちょっと変わった映画でした。もし見てない方はDVDなどでもいいので、いったん普通に見終わった後、もう一度頭の部分だけ見てみると、言ってる意味が分かるかもしれません。

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by imao001 | 2008-07-27 16:58 | レビュー