映像制作/USTREAM・IP配信会社のジーマ代表が、徒然なるままに書き綴る とりとめもない出来事、映像、映画業界のお話 http://ji-ma.tv/ http://ji-ma.jp/


by imao001

カテゴリ:レビュー( 33 )

今回は「曲がれ!スプーン」です。ぶらり立ち寄ってしまって、思わず見てしまった作品です。

幼い頃から超能力の存在を信じ続ける超常現象のバラエティー番組AD 桜井米は、番組企画のためエスパーを探す旅に出る。ところが投稿で寄せられたエスパー情報は箸にも棒にもかからない情報ばかり。大荷物を抱え、カメラを抱え歩き回るものの、大抵がこれを機に有名になろうと考える似非エスパーがほとんど。一方、そんな超常現象バラエティーを横目に見ながら、真のエスパーチ-ムが年末恒例の交流会を開いていた… というストーリー。

元々は劇団ヨーロッパ企画のお芝居がオリジナルの作品で、また脚本もその原作の上田誠氏が書いているためか、小劇場的芝居を映画でドタバタコメディーに仕上げた、という以上の驚きはないです。率直に言ってしまうと小劇場発の低予算インディペンデント映画(予算的には見た目より結構額がいってそうだが…)。しかしそこは天下のフジテレビ。フジテレビ的コンテンツ生産工場のラインに乗ると、主演が長澤まさみ、本広克行を監督に持ってきて、スポットある程度打てばそこそこのヒットにはなるんじゃないか?という感じであっという間にそこそこヒットのロードショー作品に早変わりです(実際は、一週目全国興収で11位とちょっとやばい数字ですが…)。小劇場的な笑いは担保されているし、長澤ファンの要望にも充分こたえているとは思うので、まあ、小劇場的な笑いが好きな方やおとぎ話好きには好評かと思います。ただ小劇場好きならば、長澤まさみ主演、同じキャスティングで舞台でやったほうがいいんじゃないかな?って普通に思います。っていうか俺はそう考えてる by 亀田父。

長澤まさみ曰く、エスパーだったら「見てはいけないものを見たい!」だそうです。

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by imao001 | 2009-12-02 20:55 | レビュー

映評:「わたし出すわ」

「間宮兄弟」の、というよりも我々の世代は「家族ゲーム」の、と言う方が通りがいい森田芳光監督の「(ハル)」以来12年ぶりのオリジナル脚本・最新作「わたし出すわ」

ストーリーはいたってシンプル。東京から故郷へと戻ってきた主人公がなぜゆえかかなりの大金を持っており、その大金を惜しげもなく友人の夢や希望の実現のため差し出し続ける。主人公の目的はいったい何なのか… という、ちょっと聞くとミステリアスな展開を想像してしまうストーリー。

心地よい導入部の展開だけでなく、主人公の名前が山吹摩耶(マヤ)という雰囲気ある名前で、かつ演じるのが小雪とくれば、観客はもうそのミステリアスさにすんなり感情移入できる。その後も謎めく摩耶の行動に、観客はある種“快感”にも似たはまり具合を覚え、そのまま『だまされてもイイや…』との感情で映画に身を任せる。この映画は感覚的に言ってしまうとそういう映画なのだが、鑑賞後の感覚は非常に納得できる、人間に大事なものは何か?ということを再確認させる映画である。この映画で森田監督が描いているのは、地球上の他の動物にはない、人間だけが与えられた大事ないくつかのものを表現している様に思う。それは“夢”であったり、“お金”であったり、“言葉”であったり… 「わたし出すわ」は、人間だけが自由に扱うことを許されたこれらのものをめぐっても、決してイヤらしくなく、温かく物語が進行する。舞台は北海道なのに、とても温かく、見終わった後は心地よい安堵感の中、劇場をあとに出来る。それはこの映画が単なる“お金”にまつわるヒューマンドラマであるだけでなく、(あまりにも陳腐な物言いだが)お金では買えない“幸せ”にまつわるヒューマンドラマだからである。最近では理想すらかたることがない映画も多い中、森田監督は「(ハル)」でも見せた、デジタルではない独特の感性で現代を描写し続けているように思う。

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by imao001 | 2009-11-30 20:26 | レビュー
あまりに政治ネタが続いたので本来の目的でもあった映画評論の方も記録を残しておきます。映画を見ていなかった訳ではなく、映評をブログに書き残そう、と思わせる映画がなかったことが第一の要因かと思います。まぁ、それ以上に政局に関心がいっていたこともあるのですが…

さて今回ご紹介する映画は「BALLAD 名もなき恋のうた」です。実はこの映画、原作がありまして、その原作というのが多くの方が『え?』と思ってしまう映画なのです。それは… アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」なんです。この「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ~」は公開当初からその内容が評価され話題を呼んでいましたが、一方で話が子供が喜ぶようなハッピーエンドではないため賛否両論ありました。しかし大人には結構な評価があり、今回このようにスピンアウト、というか実写リメイクとなったそうです。ちなみに余談ですがアニメ版ではリンクにもある小林愛さんが廉姫の声をやってました。(それにしてもアニメ映画のほうは声優さん、ホント錚々たるメンバーです)

物語はいわゆるタイムスリップ物で少年がふとしたことから戦国時代へとタイムスリップしてしまい、その時代の人々を救う、というたった数行で解説出来てしまう映画です。じゃあなぜ映評まで書くんだ、などといわれると困ってしまうのですが、物語の進行、おどろかせどころや泣かせどころはなかなかに巧みに展開されていくのです。監督の山崎さんはCG畑から実写もの、物語ものに入ってきたこともあってCGを効果的に使って演出します。「ALWAYS」や「K-20 怪人二十面相・伝(監督ではありませんが)」など物語とVFXとの見事なまでの融合はなかなかです。今回もエンドロールに『監督・脚本・VFX 山崎貴(だったと思います)』と出ているので、そのVFXを物語に組み込む手腕はご本人も自信を持っていらっしゃるのだろうと思いますし、確かに客観的に見ても非常に巧みです。草なぎさん、新垣さんだけでなく周囲のキャスト陣もそつがない芝居をされていて(褒め言葉です)、しっくり感情移入できるエンターテインメントあふれる映画でした。ただ、残念なことはオープニングの勢いのよさがクライマックス手前の戦闘シーンでは一切発揮されていない、ということ。おそらくは長回しが好きで、CGを盛り込むには制作的にもやりやすいんだと思いますが、ちょっといただけない… さすがに戦闘シーンはもう少し考えて欲しかったという感じです。カット増やすとか、マルチカメラにするとか、しんどいのは想像できるのですが戦闘シーンにも細やかにCG使うとか、美術予算増やすとか… いや、物語はいいんですよ、ほんとに。物語が(荒いですが)こなれているだけにその落差が… といった感じです。でもそういう細かい指摘を大目に見ても満足できる映画ですのでお時間のある方は是非!

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by imao001 | 2009-09-19 18:01 | レビュー

映評:レスラー

鑑賞後ふと思った。『三沢はこれを観ただろうか』と…

“これ”とはダーレン・アロノフスキー監督の『レスラー』。主演は、この映画で奇跡のカムバックを果たしたミッキー・ローク。ヴェネチア映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ主演男優賞など数々の賞に輝き、特にヴェネチアではミッキー・ローク渾身の演技が大絶賛され、審査委員長を務めたヴィム・ヴェンダース監督も「胸をゆさぶる素晴らしい演技」とコメント、会場全体がロークに向けスタンディングオベーションをおくったという作品です。

ストーリーは単純明快。一時は国民的人気を誇ったレスラーの晩年の話です。ローク演じるランディは、体はもはやボロボロになり、私生活も上手く行かない中年レスラー。一時の栄華はどこへやら、現在は人気が下火になり、傷や怪我が絶えない。それでも彼はその苦境を耐えぬき、信念を持ってプロレスを続け、どん底人生から自力で這い上がろうとします。

物語としては別段大したことないと思えるんですが、鑑賞後の後味はというと胸の底に“ズシ~ン”と重たいオリのようなものが残ります。まぁとにかくミッキー・ロークの演技にはもう完敗。映画を見ている人の多くが自然と、そのプロレスラーの晩年の勇姿をミッキー・ロークの俳優人生と重ねあわせ見ていると思います。その不気味なまでのシンクロ感は、正直、涙なしでは観れない。そこへ来てブルース・スプリングスティーンの熱い歌声、娘役のエヴァン・レイチェル・ウッドの好演、これまたその全盛期をとうに越えてもなおすばらしい演技を披露するマリサ・トメイ、作品の様々な要素すべてが眩しい輝きでいっぱいの映画です。

また実は私、ちょっとしたプロレスファンでした。最近は全くといって良いほどご縁がなくなってしまいましたが、子供の頃は誰もが憧れていたようにタイガーマスクら(なぜか)マスクマンの勇姿に声援を送り、いつも「あそこであの技をかけて…」とか「こうしてこの技を繰り出し、フォールして…」などと勝手に試合展開などを妄想したものでした。また大学時代は、苦痛で顔をゆがませた時の私の顔が、友人曰く小橋健太氏に似ているとの事で、事あるごとに顔真似して皆を楽しませていました。それだけに先日の三沢選手の事故は、正直、胸が詰まる思いでした。そんな思いとともに見たこの『レスラー』。レスラーの華やかなところだけではない実際のリアルな姿が垣間見れた気がして少し嬉しかったです。

地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク

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(C)Niko Tavernese for all Wrestler photos

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by imao001 | 2009-08-07 00:34 | レビュー

映評:愛を読むひと

年に200本以上も映画をむさぼるように見ていた浪人や学生の頃は、心底感動する映画によく出会えました。もちろんその本数ゆえにということもありますが、自分で言うのもなんですが当時は結構、映画を見る眼が肥えていたということがいえます。ところが、自由な時間が減り、働き始めて以降は徐々に映画を見る機会も減り、会社を運営するようになってからは週1本が限界の状況です。そんな昨今、まれに涙を流すような映画はあっても(涙腺が弱くなったか?)、号泣できる良質な映画というのはそうめったにありませんでした。ところが!ところが先日、まったく予備知識なしで、“ケイト・ウィンスレット”が出ている、という理由だけで見に行った映画で、不覚にも号泣してしまいました。近年、これほど感動した映画はないと胸を張っていえます。その映画が…

「愛を読むひと」

タイトルからしてニック・カサヴェテス監督の「きみに読む物語」とさりとて変わらんだろうと軽んじておりました。内容もまったく知らず、テレビの予告を見ながら、『彼が耳元で本を読んでくれる幸福な日々、老後になってそんな日々を回顧する』的な隠居映画だと思ってました(じゃあ何で見に行ったんだと聞かれると「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」の好演が気になっていたからでしょう…)。侮っておりました。この映画、ストーリーを知らずに行くとグッと来ます。

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ということでここからはここをクリックした後、反転して読んで下さい。ネタバレもありますんで。
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by imao001 | 2009-07-06 20:51 | レビュー

映評:余命1ヶ月の花嫁

実話を元にした映画というのはある意味作り手側にとって諸刃の剣であって、どこまでの史実、事実を物語に活かすかは非常に高度なバランス感覚が求められます。映画の冒頭、『事実を基にした…』とか、『実際に起こった出来事に着想を得た…』といった説明文を皆さんは見たことがあるかとは思うのですが、見ている観客にとって実際物語のどれくらいが事実で、どれくらいが作り手側の創造かというのは知るすべはほとんどありません。よって『事実を基にした…』という事実は、実際は、その映画や物語に付加価値を与えるひとつの記号でしかなく、私はそのこと自体にあまり大きな意味は無いと思っています。一方、ドキュメンタリーではある意味その逆で、どこまで物語を事実に活かしていくか、というバランス感覚が求められます。別な言い方をすれば、事実の積み重ねから物語を見出していく、物語を作っていくことが非常に大事であるといえます。

やや言葉遊びみたいになってしまっていますが、わかっていただけてますでしょうか?

つまり、前述のような意味でいうと、この「余命1ヶ月の花嫁」は、映画の完成度としては非常に残念な結果になってしまったような気がします。どこまでが事実でどこまでが制作者の演出家かはわかりませんが、私としては総合的に事実と物語のバランスが悪かったのではないかと思います。事実にあまりにも縛られてすぎていたのではないかと。自身の意見が常に的を射ていると思っている程自惚れてもいないので、言葉遊びのような今回の記事に興味を持った方は是非「余命1ヶ月の花嫁」をご覧頂ければと思います。不必要と思えるシーンや描写が色々とあるのですが、事実ゆえ挿入されたものなのか、物語を形作るために演出として挿入されたのか見えて来ず、端的に言うと色んな部分で映画が物語として上手く描写されていない様に感じました。これはベテラン(廣木隆一監督)のお仕事というにはちょっと受け入れがたい出来でした。色々と制作現場は大変だったように思われますが… 期待していただけに残念でした…

どうやら今年はTBS製作の映画は調子がいいようです…

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by imao001 | 2009-06-02 10:28 | レビュー
※注意! ネタバレはしませんが、大まかなストーリーが記述されてます

ダニー・ボイル監督 久々の痛快作です。アカデミー賞8冠を受賞するほどの映画って本当に“普通じゃない”、と改めて監督の手腕に感心しました。

映画はインドのスラム街を縦横無尽に駆け巡るサリームとジャマールの兄弟の姿から始まるのですが、映画のテイストを形作る撮影のダイナミズム、簡単に言ってしまえば疾走感がここからすでに溢れていて、観客を魅了します。まさにつかみはOK!といった感じ。また、今となっては時間軸を逆転させたり複雑にする演出、編集というのはあまり珍しくありませんが、この映画にとって時間軸の交差は非常にいい演出となっています。おそらく最初は脚本をひとつのストーリーで書いて一度分解、再構成してエピソードなどを詰めていくといった作業を行ったと思いますが、なかなか歯切れが良い編集でかなりリズムよく繋がれています。映画全体の編集リズムは申し分ないくらいです。ただ今回の編集はいつものボイル組のマサヒロ・ヒラクボ(こんなところでも日本人は活躍しています!)ではないのが不思議でしたが。

ストーリーは、スラム街に生まれ育ち、厳しい生活環境の中 生き延びてきた青年ジャマールはある時、人気番組「クイズ$ミリオネア」の出演チャンスを得る。番組はつつがなく進行し、人生の中で得てきた厳しい経験や知識であと1問の正解で最高賞金額2000万ルピーを手にできるというところまでたどり着く。しかしその2000万ルピーへの挑戦を前に放送時間がタイムリミット、翌日へと持ち越される。しかし最後の1問を残し放送局を出ようとしたところ、ジャマールは不正を疑われ警察へと連行される。警察ではスラム育ちのお前みたいなやつがすんなり正解できるはずがないと拷問を受けるものの、ジャマールは自分はなぜ正解できたかを自身の経験を話すことで説明していく。そしてなぜ彼が「クイズ$ミリオネア」に出演しようと思ったかも同時に明かされていく… 演出上、時間軸が逆転したり、反芻したりで巧みに現在と過去が交差するのですが話としては大まかにこんな感じです。

30代のシネフィル(いわゆる熱狂的な映画ファンのことです)はこのダニー・ボイルという監督を少なからず期待してこれまで見てきたと思います。『シャロウ・グレイブ』『トレインスポッティング』のストーリーの巧みさに映像、編集の面白さを加味させ、まさに“ダニー・ボイルならでは”の映像のオルタナ・ロックワールドを構築してました。それは出身国イギリスという環境ももちろんあったのでしょうが、かのRSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)でも演出しているぐらいですので、その演出センスは非常に評価されていたのでしょう。そこに輪をかけ映画『トレインスポッティング』の成功ですからハリウッド進出も確かに問題なかったとおもいます。ただ個人的に思うにその後が非常に悪かったかな、と… 『普通じゃない』を撮ったはいいが観客に普通だね、と思われてしまったり、『ザ・ビーチ』にしても、やはりハリウッドという枠組みでは奔放な個性は受け止められなかったみたいですし。その後、撮っても撮っても思うような成果(=ヒット)が得られないということもあって本人もハリウッドという世界に飽き飽きしていたんじゃないでしょうか。そこでボイルが見つけた新天地が“ボリウッド”、世界一の映画産出国インドです。おそらく水が合ったんじゃないかと思いますが、映画全体に、監督・スタッフ・キャストの生き生きとした躍動感、2時間を見せきる疾走感があります。貧困の中生まれ育った主人公が、自分の夢のために努力し、時には狡猾に、時にはまっすぐに生き延びる、そんな生き様が最終的には自身の信じる夢へと繋がってくるという成り上がり的なストーリーだけれども、誰もが共感できる純粋なストリーであり、ラブストーリーも合わさって監督 ダニー・ボイルの復活を告げる良い映画でした。まだご覧になってない方は是非!、と超オススメの映画でした。

ちなみに劇場では期待の映画「MW(ムウ)」の大きなスタンディーが飾ってありました。
早くみたいですねぇ。
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「スラムドッグ$ミリオネア」オフィシャルサイト

『スラムドッグ』オスカー効果で都会中心にヒット

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by imao001 | 2009-05-19 21:46 | レビュー

映評:グラン・トリノ

クリント・イーストウッド監督の最新作「グラン・トリノ」を見ました。映画を見ての率直な感想は『老いてなお盛んなり』とは、まさにイーストウッドのためにあるような言葉に感じました。それほど79歳という年齢を感じさせない映画です。実際、最近でも「ミスティック・リバー」「 ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」「チェンジリング」と年1本以上ともいえるペースで監督していますし、その上自身でも主演できるのですから喜寿を回っているというのに、もうただ驚きです。

感想の前にまずは大まかなストーリーを。
イーストウッド演じる朝鮮戦争からの帰還兵、ウォルト・コワルスキーは妻にも先立たれ、生きるということに格別な張り合いもなく日々をすごしていた。頑固で孤独な老人 ウォルトの唯一の誇りは整備工としての自慢の腕と、自身も生産に貢献したフォード社の“グラン・トリノ”。自慢の一品グラン・トリノを時間があれば丁寧に手入れし、その優雅で誇らしい姿を眺めていたウォルトだったが、ある時グラン・トリノが盗まれそうになる。盗もうとしていたのは隣に住むモン族の青年、タオだった…

基本的な物語は、古き良き時代のアメリカ人とベトナム戦争以降、国を追われる様に移住してきた、モン族(広く見るとアジア人種)との魂の交流とでもいえるでしょうか。

この「グラン・トリノ」という映画は、まさに現代のアメリカの写し鏡ともいえる作品だと思います。アフガン侵攻、イラン戦争、そして金融危機を作り出したアメリカという国は今、真剣に迷っています。これまでアメリカは自分が世界を牽引できる唯一の国と信じて、正しいと思えることは胸を張って行動してきました。民主主義然り、軍需拡大然り、核保有然り。ところが正しいと思ってきた信条は必ずしも完璧ではなく、何を指針にすればいいのか、まさに路頭に迷っているような悩み様です。世界の父足り得ようと、威厳を保とうと、弱みを見せまいと。それでも虚勢といえなくもないプライドに悩まされながらも、アメリカという国は気を張ってやってきました。しかし今のアメリカは自分が作り出してきた歴史が果たして正しかったのか、回顧し自問しています。その美しい“グラン・トリノ”を眺めながら… 頑固さゆえに妥協や協調をたやすくは受け入れられない、アメリカという国はまさにクリント・イーストウッド演じる頑固じじいと同様です。物語はその後、隣人の青年タオに心を開いてゆくウォルトの姿が描き出されていくのですが、これ以降はややネタバレにもなるので映画をご覧頂ければと思います。

この映画でイーストウッドは“過ちを認め、許しを請う”という事は難しいが受け入れなければいけない、と言っているように思います。また同時に“つぐなう”ということはいかに難しい行為なのかも語っています。イーストウッド自身も朝鮮戦争に出兵し、アメリカと共に歩んできたからこそ、現在にアメリカの混迷に深く苦悩しているからこそ、この映画が生まれたのだと思います。しかしストーリーとしては何の変哲も無いこの物語を極上の芸術映画にしてしまうのがイーストウッドの腕なのだなぁとつくづく思いました。

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映画「グラン・トリノ」オフィシャルサイト

「グラン・トリノ」特別試写会の様子

イーストウッドがカンヌ・パルムドール名誉賞受賞!

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by imao001 | 2009-05-05 23:08 | レビュー
先日、新文芸座にてテオ・アンゲロプロス監督のオールナイト上映をやっていたので足を運びました。個人的には現在現役の監督では最も尊敬する監督でもあるので、多少の疲れも構わず3本、7時間以上の上映時間を堪能してきました。ちなみに同時上映は「狩人」「蜂の旅人」の2本です。こちらも近日中にアップ予定、ご期待ください。

さて、「こうのとりたちずさんで」はアンゲロプロス監督の長編第9作。弊社には「こうのとりたちずさんで」フランス版B倍以上のビッグサイズポスターがあるほど心底好きな作品でもあります。東京に出てきてようやく映画の表現が分かりかけてきた頃に出会い、鑑賞後その深い映像表現に言葉をなくした事を今もはっきり覚えています。それほど田舎もんの私にとっては衝撃的な映画でした。

物語はというと、難民問題を取材に来た主人公のTVディレクター、アレクサンドロスが国境近くの村を取材するうち、死んだと思われていた政治家を発見。その政治家と彼の別れた妻、難民の少女などの人物が絡み合い、そうした中に巧みに難民や国境問題が描き出されるという、政治背景を知らないとやや難解に思える内容です。ギリシャは当時ユーゴ、アルバニア、ブルガリア、トルコ等と国境の国々が紛争や国境問題を抱えていたため、難民問題も盛んに話題になっていただろうし、政治をネタに映画を作ることの多い監督だけにギリシャ現代史のひとつとして撮影されたんだろうなぁと思います。しかし“映画は物語を追うだけでなくとも純粋にその根幹は伝わる”と言えばいいのでしょうか、この映画、アンゲロプロス監督の映像詩に体を任せているだけで容易にメッセージが伝わってくるのです。共同脚本がトニーノ・グエッラだったり、音楽がエレニ・カラインドルーといわゆるアンゲロプロス組で固められていることも完成度が高い要因のひとつでしょう。是非ご覧頂くことをお勧めします(といっても劇場で見れる機会は数年に1度程度ですが…)。

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こちらはパルムドール作品「永遠と一日」紹介です
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by imao001 | 2009-03-19 22:49 | レビュー

映評:7つの贈り物

ここのところ仕事やら事務処理やらイベントやら、色んなことが重なり更新が途絶えておりました…スミマセン。この一期間に見た映画で個人的にも記録しておきたいものも結構あり、またもやしばらくは映評が続くかもしれませんが、お時間のある方は寄っていってください。あまりそういったことをご希望でない方もこれを見て映画館に足を運んでいただければ幸いです。別に興行側から何かもらっている訳ではありませんが、私自身が“映画は映画館で見よう!”主義なもので。

そんなわけでまずはウィル・スミス主演『7つの贈り物』から。

『幸せのちから』の監督 ガブリエレ・ムッチーノとウィル・スミスが再び組んだ感動のヒューマン・ドラマ、という宣伝だけは執拗に繰り返され、肝心の内容のほうが情報量が少なくどうやらストーリー的にどんでんがあったりとかするのだろうと思っていました。私個人は通常は多少なりともあらすじだの他人の映評だのなんらかの情報を入れて見に行く人間なのですが、どうやらややストーリーを隠したがっているような宣伝の仕方に、通常とは逆に、何の予備知識も入れずに見に行きました。

簡単なあらすじを言うと(といってもネタバレしてしまうのでざっくり、ボカシて紹介します)、ウィル・スミス演じる主人公 ベンが自身の過去を清算するため自ら選んだ7人に次々と接触し、彼らに“運命変えてしまうような”贈り物を渡していく。というのが大まかなストーリー。     ってこれだけでは抽象的過ぎてまったく分からないでしょうが…しかしながら映画のつくりとして結構時間軸をいじっているので幾つか具体的な話をしようものなら先の展開が見透かされてしまうので残念ですがこの程度でご勘弁願います。

ストーリーの展開というか“どんでん”は気持ちいいです。脚本もシンプル、且つスマート。編集でストーリーを際立たせ、クライマックスまで見せきるいいストーリーの見本みたいなものです。クライマックスに向かっていくにつれそのからくりが分かっていく展開は本当に見事で、その分かり具合のさじ加減が“快感”です。例えて言うならば漫画の『課長 島耕作』が数々の仕事上の問題や人間関係をクリアしていって、またプライベートも充実させて、それでいて無事昇進し、成功も収め、最終的に『社長 島耕作』になるぐらいきもちいいです(ってこれって例えになってるかな?)。まあ両者ともに途中からは展開が読めて、それでいて逆にだまされてやった感がある、そのバランスみたいなものが非常に良くてストーリー的にもぐいぐい引き込まれ気持ちいいということなのですが…

ま、久々に万人にお勧めしたい映画だったなぁと映画館を出るときには素直に思いました。またネタバレしても良いという方は下の ネタバレしてもよい方はこちら 部分に書かれているのでご覧ください。いやぁ、しかし泣きましたよ。久々に。


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映画・ドラマ『7つの贈り物』

ネタバレしてもよい方はこちら
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by imao001 | 2009-03-19 09:03 | レビュー