映像制作/USTREAM・IP配信会社のジーマ代表が、徒然なるままに書き綴る とりとめもない出来事、映像、映画業界のお話 http://ji-ma.tv/ http://ji-ma.jp/


by imao001

カテゴリ:レビュー( 33 )

ROLAND VC-30HD いよいよ登場

NAB2011以降、各所で話題になっていたローランドVC-30HDがぼちぼち市場に出荷されているようです。近く実機が導入されるショップから連絡があったので触った感想はその際にでもご報告できたらと思いますが、個人的にはこれからの制作会社に非常に使い勝手が良く期待感が持てると思っていたので、どういった点が使えるのかなど制作側の視点でご紹介しようと思います。

まず多くの制作会社さんが現在悩みとして持っていることに、これまで貯めに貯めたテープの扱いをどうしようか、ということがあるのではないでしょうか。現状では将来の二次利用などの可能性も含めデータ化するのがベストだと思いますが、テープの量によってはデジタイズに結構なコストが掛かると思います。そこでVC-30HDのエンコーダーとしての使い道です。SDIがないのは悔やまれますが、映像入力にはHDMIにiLINK、コンポーネント、コンポジットが付いてますし、音声もXLRにRCA Audioと制作会社でも馴染みの入力があるので、デッキを機材屋さんからレンタルして、これまでのテープ素材をHDCAMからデジベから何から一気にデジタイズしてしまうという事が可能です(HDCAMはMPEG2の1920×1080iの35Mbps 4:2:0が上限とはなりますが)。またUstreamなどのストリーミング配信も最近ではニーズが出てきている会社さんもあると思いますが、そこでのエンコーダーとしての機能も充分使えるようにできています。ライブ配信の際、映像と音声がそれぞれ入力が違うということがあるかと思うのですが、VC-30HDは音声エンベデッド、仮にソースの違いによる音声のディレイがあったとしても専用ソフトの無償ダウンロードで簡単にリップシンクできるという代物。HDでのストリーミング配信やアーカイブ用の変換など様々な用途に対応したコンバーターなので、テープメディアなどが多い制作会社などに一台あっても十分機能を果たすと思います。

実際、ビデオコンバーターなどは制作会社からすると余り馴染みのない機材かと思います。これまで編集作業の技術的な部分の多くはポスプロの方にお願いしていたでしょうし、仮に予算がなく社内で処理しなければいけない案件でも親しい技術さんにノウハウを聞いて、そのとおりに行っていればよかったからです。が、最近は撮影機材や編集の技術進歩はそれはもうめざましく、ファイル納品が当たり前の現場など多いですし、クライアントにちょっとした知識があれば撮影、編集のHow Toなど(DSLRやAEのはやりの手法など)最新のワークフローが求められます。またUstreamなどの配信の分野では特に、技術的に疎いと臨機応変な対応が出来ず、プロジェクトの失敗にもつながりかねません。私はかねてから“知識や機材など技術性に優位に立てなければ制作会社の未来はない”と考えていますので、上記のような使い道がある制作会社さんであれば、VC-30HD なかなか使える1台かと思います(想像よりお値段が高かったのですがね…)。

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by imao001 | 2011-07-27 22:42 | レビュー
久々の更新は映評からです。遅ればせながら「英国王のスピーチ」を見に行ってきました。連休は仕事も溜っているので「ミスター・ノーバディ」一本で我慢しようと思っていましたが、今見逃すといつ観るだろうかと思ったら「ミスター・ノーバディ」よりこっちの映画に足が向いていました。

この映画は実話に基づく物語で、現在の女王エリザベス2世の父、先のロイヤルウェディングで話題になったウィリアム王子の祖父にあたるジョージ6世のお話です。第二次世界大戦直前の英国、幼少時のトラウマから人前に出ることが苦手になってしまった国王の次男“バーディ”。ある日、父のジョージ5世が崩御。本来ならば長男のエドワード8世が王位を継承するはずだったのですが、様々な要因から結果的に次男のバーディに王位が継承されます。ところが内気な性格、そして幼い頃から抱えていた吃音というコンプレックスが災いし、公の場でのスピーチは散々たる有様、これでは国王の威厳どころではなく正に苦痛の種となっていました。そこで国王は妻 エリザベスの勧めもあって吃音を治そうとトレーニングを始めます。果たして孤独と苦しみに苛まれる王は上手にスピーチをこなせるようになるのか… といった内容です。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、私は大学時代、演技を専攻していました。お世辞にも上手な役者とは言えず、舞台上で台詞を“噛む”“吃る”“飛ばす”のは当たり前、時には自分でも何が面白くて舞台の上に立っているのか?と思うこともありました。ですので吃音の苦しみというはなんとなく想像がつきます。舞台上で台詞が出てこなくなった時のあの恐怖にも似た感覚は、スピーチでうまく話せない恐怖と似たような気がするからです。ですからある種の共感的なものを求めてこの映画を見ようと思ったのですが、実際にはこの映画には英国らしいユーモアがあり、苦難を乗り越える勇気ある国王の姿があり、凹んだ時には誰しも周りの温かい支えが必要だといった自然の教えのようなものがあり、観終わって非常に幸福感に包まれたような感じがしました。『美味しいものをお腹いっぱい食べた』というのとはまたちょっと違って、『お茶席で味わい深い和菓子を慎ましやかに頂きました』、そんな感じにも似た至福の時間でした。時代背景が明るい時代なわけではないですし、表現も、映し方も、物語もハリウッド的な陽気さはないのですが、(イギリスへ行ったことがないので単なる思い込みかもしれませんが…)イギリスの様に雨や曇り空のもとでも人々は明るく、たくましく生きているんだなぁと感じさせられる映画でした。

(C)2010 See-Saw Films. All rights reserved.
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「英国王のスピーチ」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
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by imao001 | 2011-05-03 21:49 | レビュー
何の気なしに見に行く映画ほど意外な発見があったりして楽しめることがあります。スーパーモデル ワリス・ディリーの成功までの日々を描いたこの映画「デザート・フラワー」も、いわゆるサクセスストーリー的な映画と思って見に行ったのですが、意外や意外、ちょっと一筋縄ではいかない映画でした。

物語はワリス・ディリーがロンドンで浮浪者同然の生活を送っているところから始まります。ソマリア出身の彼女がなぜロンドンにいるかは映画をご覧いただくとして、その後 ワリスは浮浪者のような生活から、ファッションカメラマンに見出され、一転、モデルの世界で栄光をつかむことになります。

映画の始まりの舞台がこの大都会ロンドン、というところがなかなか洒落ていて、もしこの映画の始まりがワリス・デイリーの生まれ故郷ソマリアなどで映画が始まっていたら、きっとここまで鮮やかに彼女の人生を描けていたとは思いません。これはもう構成の勝利で、今の構成以外の展開だったならば印象ももっと違ったものになって、これほど劇的にも、面白くもならなかったでしょう。そういう意味ではなかなかの脚本(もしくは編集)でした。また実際のワリスがそうなのかはわかりませんが(劇映画では自伝的な映画でもよく歴史を誇張して表現されますから…)、ワリスはとにかく幼少のころから強運を持ちあわせていて、数奇な運命でロンドンにたどり着き、ひょんなことからモデル界に足を踏み入れ、そして「VOGUE」など一流ファッション誌の表紙を飾るまでの世界的ファッションモデルとなります。この導かれ方はおそらくスターダムにのし上がった人々は多かれ少なかれ持っているものだと思いますが、彼女は本当によい運命に導かれてきたのだなと、物語の端々で思わせられます。しかし、映画が進むにつれその華やかなポジションとはうらはらの、彼女には衝撃の過去が秘められていたことを知らされます。衝撃の過去ってなに?って思われる方もいるでしょうがこれもやはり劇場で楽しんでいただければと思います。私自身も全くこのことを知らずに見に行きましたが、そのおかげでこの映画を堪能できたと思っていますんで。

実在の人物のサクセスストーリーはとかく美化されがちなので話し半分程度に見たほうがよいとは思いますが、この映画はそういった点以外の面でも新たな気付きを得ることができるので、もし何か魅かれる部分があったなら見に行くことをお勧めします。

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「デザート・フラワー」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
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by imao001 | 2011-01-22 14:57 | レビュー

映評:レオニー

なかなか面白い映画だったのでちょっと書き残しておきます。倍賞美津子主演の「ユキエ」など、女性を主人公に地味なテーマもしっとり仕上げる(という勝手な印象を持ってます)松井久子監督の新作、タイトルは「レオニー」です。

物語の主人公はタイトルにあるレオニー・ギルモア嬢。この方あの著名な彫刻家イサム・ノグチの母親で、イサム・ノグチとともにアメリカ、そして日本で厳しい時代を生き抜いてきた人物。物語は日本人の子を宿したレオニーが、潔く自信の選んだ運命を引き受け、自分らしく生きていく姿を追った人物史です。あまり著名でない外国の人物譚は興行的にも厳しいのでしょうが、観に行ったときは休日ということもあってか結構お客さんが入ってました。

前置きはさておき中身の話へといきますと、舞台は20世紀初頭のニューヨーク。キャリアウーマンの先駆け的な印象の主人公、レオニーは、作家の野口米次郎(イサム・ノグチの父)と出会う。やがて、二人は愛し合うようになりレオニーは、献身的に彼を支え、仕事面でも彼は注目されるべき才能だ、と様々な出版社に彼をプロデュースしていく。野口米次郎との厳しくも信念を持った生活、献身的に支えるその姿は、当時のニューヨークの雰囲気を蘇らせたかのような雰囲気(もちろんその時代のことはよく知りませんが)で、なかなか迫力ある時代描写です。そんななか彼女は妊娠、イサム・ノグチを宿すのですが、米次郎は突然日本へ帰国、 一人残されたレオニーは、未婚のまま子どもを産む決意をし、波乱の人生を歩み始めます。

一旦映画が始まると、一時期のジェームズ・アイボリーのごとく巧みな陰影と色彩で映画にググイッと惹きつけられます。これだけでも十分見る価値はありますが、なかなかリアリスティックな描写や美術に“固いアート映画”と感じるかもしれませんが、そのへんは地味ですが固い役者のアンサンブルで吹き飛ばしてくれます。ストーリーも実際のレオニーの人生が波乱に満ちていたらしく、引き込まれるエピソードが積み重なり結構感情移入しますし、レオニー役のエミリー・モーティマーの芝居もかなりイケテます。また、印象的に演出されている勅使川原三郎(この人のダンスは最高です!)や中村獅童(いきなりの正月公演決定。)の姿も結構好感が持てます。忙しい最中観に行く映画は外すと結構ショックが大きいですが、この映画は充分に満足して劇場を出れましたので、ぜひ見に行ってみることをおすすめします。

身勝手男を演じた中村獅童が「女性の視線がキツい」と苦笑い

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by imao001 | 2010-12-11 18:32 | レビュー
気づけばひと月も更新しておりませんでした。大変失礼致しました。さて、大小様々な映画祭に足を運ぶ私ですが、そんな私が国内で最も信頼できる映画祭として一目置いている『東京フィルメックス』の今年の上映作品が決まりましたのでご報告。

特に注目なのは台湾、張作驥(チャン・ツォーチ)監督の「愛が訪れる時」。私が台湾長期留学中、ちょうど台北市西門町のアート系の映画館でロングランしていたのがチャン・ツォーチ監督「忠仔(チュンと家族)」でした。悲惨な家庭環境の中、たくましく生きる主人公の若者を、ドキュメンタリー的手法の“動”の演出と、陰惨でいながら重厚な“静”の物語で描いた作品に、エドワード・ヤン監督、侯孝賢監督の次の世代として新作を楽しみにしていた監督です。作品を重ねるごとに、はやりの舞台設定や現代風の映画演出へと味付けは変わったもの登場人物のどこか荒々しい関係性や、ざらついた役者、演者という素材などは「最愛の夏」、「美麗時光」にも受け継がれて、リアルな台湾を見るようで心地良かった気がします。

今回の作品は果たしてどのように仕上がっているのか…、まずはかつて生々し感じた台湾の荒々しい感触を思い出すために観に行きたいと思います。

ちなみに以下、他のコンペティション作品です。

『ハンター』(イラン、ドイツ) 監督:ラフィ・ピッツ

『夏のない年』(マレーシア) 監督:タン・チュイ・ムイ

『密告者』(香港) 監督:ダンテ・ラム

『独身男』(中国) 監督:ハオ・ジエ

『トーマス、マオ』(中国) 監督:チュウ・ウェン

『ビーデビルド』(仮題)(韓国) 監督:チャン・チョルス

『ふゆの獣』(日本) 監督:内田伸輝

『Peace』(日本、アメリカ) 監督:想田和弘

『アンチ・ガス・スキン』(韓国) 監督:キム・ゴク、キム・ソン

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by imao001 | 2010-09-30 21:21 | レビュー
取材などでお世話になった「8.12連絡会」の美谷島邦子さんが、事故から25年という時期的なこともあり書籍を出版されました。タイトルは『御巣鷹山と生きる』

25年も経つとやはり事故の概要から説明しなければならないか… と感じるのですが、その事故とは1985年8月12日に起きた単独の飛行機事故としては世界最大の惨事、日航機墜落事故のことです。詳細は、ここでつらつら書き記すより、お読みいただいているひとりひとりの方に調べていただいたほうが皆さんの記憶に残るかと思いますので、あまり多くは説明いたしません。ただ、個人的にもこのことを記憶にとどめておきたい、より多くの人々にこの事実を知ってもらいたいという意味もあり、こうして出来る範囲の情報発信をさせていただきます。

今回美谷島さんが書かれた書籍『御巣鷹山と生きる』には日航機墜落事故後、ご遺族の方々で作られた連絡会「8.12連絡会」の25年の歴史が繊細に綴られています。美谷島さんや他のご遺族の苦しみ、風化させまいと願う意思、不幸な事故がもたらした絆… 様々な思いが綴られています。私にとっては特に“第7章 報道”の部分は心苦しく、ズシリと何かが重くのしかかるような読後感を感じました。避けられないような不幸な事故というのは起こりえます。ただ、報道に携わってきた者としていつも思うのは、不幸な出来事の上にさらに起こってしまう “報道被害” “メディアスクラム” のようなことは、決して起こしてはならない、そう思います。報道側が傷ついた人達にさらなる悲しみを与えることなどないよう、この様なブログであっても報道の良心を胸に有効な情報を発信をしていきたいと思います。

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過去記事:2009年8月12日 「8月12日という日」

日航、銀行団に支援拡大要請へ 7月1日にも

日航、IBMの提携解消に思う
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by imao001 | 2010-06-30 23:26 | レビュー

映画館大賞2010

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学生時代、私は渋谷の某映画館でアルバイトをしていました。映画館で働いた経験は現在の自分に非常に役に立っています。映画館のような接客業やサービス業は自然とホスピタリティの能力が養われ、考え方も自然と顧客、観客目線になりますし、また、どのような形の仕事をしようとも顧客とのコミュニケーションは非常に大切なので、接客業をしっかりとこなしてきた過去は、今になって思えば他の仕事を行う上でも応用が効き、社会人としてのひとつの資質を与えてくれたように思います。

さて本題なのですが、例年、映画館の従業員が今年一番面白かった映画を選ぶ『映画館大賞』というのがあります。ま、『本屋大賞』の二番煎じと言われてしまえばそれまでなんですが、映画館スタッフが、まさに自信をもってオススメする自分の今年一番の映画を選び出す賞レースです。ですから、そのラインナップ、選び方も結構マニアックでもありつつ、一般の皆さんにとってもまさにオススメの作品が選ばれるのです。その今年度の映画館大賞が先日発表されました。結果はたしかに私も元劇場スタッフだったこともあって私の好みと非常に似通った結果だったように感じました。

以下、受賞結果はこちら
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by imao001 | 2010-03-18 21:09 | レビュー
演者に堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとりという個性的だけど客も呼べて人気あり、一定の評価あり、という絶妙なバランス感覚で形作られる映画「ゴールデンスランバー」。監督には「アヒルと鴨のコインロッカー」「チーム・バチスタの栄光」の中村義洋。この「ゴールデンスランバー」でも保たれる小気味良い物語展開は中村義洋監督の大いなる持ち味として定着していて、私見では極めて映画的質の安定した監督と感じます。実際、監督デビュー後、2005年あたりから平均して年2本は監督するという、非常に監督としては恵まれてたポジションにいるそうです。後で知ったのですがこの映画、なんと本編が2時間19分!しかしご安心下さい、そのような長さを全く感じさせない映画です。

物語りは、ごくごく普通の宅配便ドライバー青柳が、ある日、大学時代の友人 森田から呼び出される事から始まります。森田は青柳に「お前、オズワルドにされるぞ」「逃げろ。とにかく逃げて、生きろ」と突然、忠告を始めるのですが、青柳は全く理解ができない。その直後、近隣で突然の爆発、そして警察官たちが青柳を容疑者として狙いを定め歩み寄って来ます。どうやら首相の凱旋パレードを狙った爆破事件が起きたらしいが、なぜかすぐさまその容疑者として青柳が狙われているのです。身に覚えのない青柳はとりあえず警察の手から逃れようとする…、といういわゆる逃亡劇です。

素直な感想としてはとても面白い。役者陣がそこそこ個性派、だけどその料理の仕方が絶妙!といった感じで商業映画としてはスリルある展開と役者のアンサンブルで充分合格点です。個人的には濱田岳の演技、活かし方は匠の技だなと思います。突拍子もない登場の仕方であり、役柄でもあるのですが妙にそのふわふわした役柄を役柄として演じきっていて、正直、久々に俳優らしい俳優を見ていたような感じです。とある番組でかつてインタビューさせて頂いたときにも理解力は早く、質問の意図を汲みとってわかりやすく質問に答えてくれました。それももう5年ほど前のことですが、当時でもその才能の片鱗は充分伝わってきており、俳優“濱田岳”を改めて体感できる映画だったな、と思います。私は大抵の映画は前売り券を買って見に行く人なのですが、見終わった直後、『この映画1800円でもおつりくるなぁ』と素直に思いました。

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by imao001 | 2010-03-09 00:02 | レビュー
西川美和監督、笑福亭鶴瓶、瑛太W主演の「ディア・ドクター」。今更ですが拝見してきました。個人的には「ゆれる」があまりにも完成度の高い一本だったため、以降、要注目の監督と感じていました。もしご覧になっていない方はレンタルででも見てみて下さい、ちょっとした衝撃です。

さて「ディア・ドクター」です。物語は一人の医者の失踪から始まります。ある田舎の村でたった一人の医師がある日忽然と姿を消し、村人、刑事、医師を研修先としていた新米医師らが、それぞれ「なぜ先生はいなくなってしまったのか」という疑問をひとつひとつ紐解いていきます。その根底にはひとつの“嘘”が隠されているのですが、へき地医療や高齢化といった現在の医療現場の問題も含み合わせ、その“嘘”は果たして“嘘”なのだろうか…という、文字にすると訳がわからないですが、実際、“嘘”についての禅問答のような映画です。

個人的な感想から言えばラスト5分のオチがなかなかいいにもかかわらず個人的には完全に想像できてしまって、実際そのとおりだったためちょっとゲンナリです。私が映画を見に行く主たる目的として、『自分の想像を軽く飛び越えてしまうくらいの創造性をその映画は持っているか』という点が最も大事です。なので、まず話が読めてしまうとゲンナリ、映像表現がありきたりだとゲンナリ、良くあるストーリー展開や話に意外性がないとゲンナリ、キャストに魅力を感じないとゲンナリ、といった感じでいずれものゲンナリポイントが当てはまらない映画、これまでに味わったことのない体験を与えてくれる映画には大変満足して劇場を後にすることができます。ところが残念ながら「ディア・ドクター」はそうではなかった。前作を観て、新作の期待がありすぎたのかもしれませんが、こういった言い方はちょっと酷ですが凡庸な映画です。笑福亭鶴瓶の演技は確かにごく自然ですが、鶴瓶が鶴瓶としてしかスクリーンに立ち上がってこないということはやはりキャスティングミス、それ以上に瑛太は役柄にハマっているけれど、瑛太も今回は瑛太的演技を超えられていないかなと…これが前作のオダギリジョー、香川照之あたりの修錬されてきたキャストだとちょっと見え方も違うんですが…細部には決して悪くない表現が連発しますんで、映画作家としての腕は充分おありなのかと思いますので、今回はさておき今後に期待かなと思います。おっと、ずいぶんと上から目線ですが、これも私流の映画への愛です。

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by imao001 | 2010-02-14 10:03 | レビュー
辻仁成の原作を「私の頭の中の消しゴム」で泣かせの演出に評価の高かった韓国のイ・ジェハン監督が映画化。原作の映画化権売却の際、条件が条件が提示されたのかは知りませんが原作者の奥さん、中山美穂が主演、共演に私も大好きな俳優の一人、西島秀俊が出演というなかなかよい人選のキャスト、スタッフ陣です。他のスタッフ、キャストを見てもとても興味がそそられる映画かと思います。あまり公開直後に個人的な意見で動員を下げたくもないので(と心配するほどこのブログにアクセスはないですが…)、公開前とか、公開直後の斜に構えた映評は差し控えているのですが(オススメ映画は別です。素直に賞賛してます。)、この映画に関しては、興味を持った人はおそらく劇場へと自然に足を運ぶであろう映画なので素直な感想をアップします。

と言いつつ、感想を語る前にまず個人的な思いを一言。この映画、製作は韓国の会社です。原作、キャスト陣は日本のメジャーな方で占められていますが、表向きは日本映画ですが、実際は韓国映画です。何を言いたいかというと、10何年か前、国策で映画文化に力を入れ優秀な作品を世界に送り出していた韓国が、もはや国内の映画産業は衰退し、市場規模、産業として活路として日本を選んでいるのではないか、という気がするのです。単純に「監督が原作を買おうと思ったら色々条件があって結局日本映画みたいになっちゃった」というのならまだいいのですが、韓国の映画制作陣が活路を日本(おそらく“アジア”という視点かとは思いますが)に見出しているのではないかと思うのです。正直、観客にとってはどこの国の映画製作だろうが面白ければ良いのは当たり前なのですが、映画に携わる人間としては“黒船来航”という気分ではありませんが、日本の制作陣もうかうかしてられない、と純粋に思うのです。お隣には巨大な市場もあるのですから、日本映画界も視野を広げて頑張って欲しいものです。

c0162328_074191.jpg閑話休題。まず映画全体の印象でいうとちょっと長いという気がします。ダラダラしたシーンが正直多く、商業監督ならあと30分は切って欲しいボリュームです。普段、映画を見ている時には落ち着きのない私がなんとか腰を据えて見れた映画ではありますが、登場人物もこの数の映画ならば、観客の楽しみとしても、興行のことを考えても110分ぐらいの尺で済ませて欲しいです。2時間15分もの時間だと、上映時間がわかった時、限りある余暇の時間を映画に割こうと気持ちが薄れますし、またシネコンが多い現在の上映環境をさっぴいても、見に行けるチャンスが減ります。劇場側からするとこれぐらいの尺の映画を4回も上映するのは人件費等のことを考えてもちょっと厳しいですから、もう少し短くしても良いんじゃないかなぁといった感じです。

c0162328_083932.jpg演出的な面でいうと、これも全体尺の話に繋がってきますが、監督さんは映画作家的な精神が強いのか個々のシーンが長すぎます。映画たりえようとするがために延びているんでしょうが、これは作家性的な部分よりも監督のはさみを入れられない思い切りの悪さだと思います。恋愛映画を観る観客の心理としては、テンポ良く、いらぬエピソードはそぎ落として、間延び感をなくし、ハラハラドキドキを増幅させて一気にクライマックスへと辿り着かせて欲しいのです。デートムービーとしてはもってこいの映画に思えるのに、監督としては切れる尺を切れないのは残念です。監督としてはアートムービーを撮ったつもりかもしれませんので、監督に対してこれ以上の苦言はなんですが、プロデューサーならば尺なり内容なり、完成型にもう少し考えて頂ければと思います。

c0162328_082741.jpgまた映画の展開で、未完の大恋愛の後、あれから25年という設定が有るのですが、残念ながらこれが全然駄目。ヘアーメイクさん達からすればここがあなた方の腕の見せどころなんじゃないでしょうか?と言いたくなるのですが、中山、西島両氏ともに中途半端な髪型、及びメイクであれから25年という物語の基盤にヒビが入ると思います。本編をご覧頂くと誰もが『あ、このことか…』とわかるかと思いますが、ちょっとこの点は映画の完成度を損ねている様に思います。“映画の長さ”と“無理のあるメイク”、この2点は正直、結構期待していたこの映画を失望させるに足る要素でした。ただ物語や、映像美など映画としての完成度は充分ありますのでデートムービーとしても充分価値アリかと思います。高校生、大学生など、春休みを前にした公開なのでいいタイミングではないかもしれませんが時間に余裕がある方は是非ご覧下さい。

※映画は“長い長い”と言っておきながら、自身のブログは長くても一向にかまわないと思っている香川でした。

公式サイト「サヨナライツカ」

興行的には好調のようです

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by imao001 | 2010-02-11 23:29 | レビュー