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by imao001

映評:グラン・トリノ

クリント・イーストウッド監督の最新作「グラン・トリノ」を見ました。映画を見ての率直な感想は『老いてなお盛んなり』とは、まさにイーストウッドのためにあるような言葉に感じました。それほど79歳という年齢を感じさせない映画です。実際、最近でも「ミスティック・リバー」「 ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」「チェンジリング」と年1本以上ともいえるペースで監督していますし、その上自身でも主演できるのですから喜寿を回っているというのに、もうただ驚きです。

感想の前にまずは大まかなストーリーを。
イーストウッド演じる朝鮮戦争からの帰還兵、ウォルト・コワルスキーは妻にも先立たれ、生きるということに格別な張り合いもなく日々をすごしていた。頑固で孤独な老人 ウォルトの唯一の誇りは整備工としての自慢の腕と、自身も生産に貢献したフォード社の“グラン・トリノ”。自慢の一品グラン・トリノを時間があれば丁寧に手入れし、その優雅で誇らしい姿を眺めていたウォルトだったが、ある時グラン・トリノが盗まれそうになる。盗もうとしていたのは隣に住むモン族の青年、タオだった…

基本的な物語は、古き良き時代のアメリカ人とベトナム戦争以降、国を追われる様に移住してきた、モン族(広く見るとアジア人種)との魂の交流とでもいえるでしょうか。

この「グラン・トリノ」という映画は、まさに現代のアメリカの写し鏡ともいえる作品だと思います。アフガン侵攻、イラン戦争、そして金融危機を作り出したアメリカという国は今、真剣に迷っています。これまでアメリカは自分が世界を牽引できる唯一の国と信じて、正しいと思えることは胸を張って行動してきました。民主主義然り、軍需拡大然り、核保有然り。ところが正しいと思ってきた信条は必ずしも完璧ではなく、何を指針にすればいいのか、まさに路頭に迷っているような悩み様です。世界の父足り得ようと、威厳を保とうと、弱みを見せまいと。それでも虚勢といえなくもないプライドに悩まされながらも、アメリカという国は気を張ってやってきました。しかし今のアメリカは自分が作り出してきた歴史が果たして正しかったのか、回顧し自問しています。その美しい“グラン・トリノ”を眺めながら… 頑固さゆえに妥協や協調をたやすくは受け入れられない、アメリカという国はまさにクリント・イーストウッド演じる頑固じじいと同様です。物語はその後、隣人の青年タオに心を開いてゆくウォルトの姿が描き出されていくのですが、これ以降はややネタバレにもなるので映画をご覧頂ければと思います。

この映画でイーストウッドは“過ちを認め、許しを請う”という事は難しいが受け入れなければいけない、と言っているように思います。また同時に“つぐなう”ということはいかに難しい行為なのかも語っています。イーストウッド自身も朝鮮戦争に出兵し、アメリカと共に歩んできたからこそ、現在にアメリカの混迷に深く苦悩しているからこそ、この映画が生まれたのだと思います。しかしストーリーとしては何の変哲も無いこの物語を極上の芸術映画にしてしまうのがイーストウッドの腕なのだなぁとつくづく思いました。

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映画「グラン・トリノ」オフィシャルサイト

「グラン・トリノ」特別試写会の様子

イーストウッドがカンヌ・パルムドール名誉賞受賞!

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by imao001 | 2009-05-05 23:08 | レビュー