映像制作/USTREAM・IP配信会社のジーマ代表が、徒然なるままに書き綴る とりとめもない出来事、映像、映画業界のお話 http://ji-ma.tv/ http://ji-ma.jp/


by imao001

映評:東京夜曲

今回は「東京夜曲」のご紹介。

舞台は東京の片隅にある上宿商店街。浮浪人のごとき主人公 浜中が地元の上宿商店街に戻って来たことから、穏やかに暮らしていた人々の感情にさざ波の様な変化が起こっていった…という物語。

お話としては淡々とした日常の中に登場人物それぞれの感情が絡み合い、しかしそれを日本人的な内へと感情を押し込め、それぞれがそれぞれの思いを自分なりに整理していくさまを淡々と描いている。ざっくりと言い表してしまうとそういうことなのだが、感心するのは、よくもまあこれほどまでの芸達者な俳優陣を見事に自分の映像世界へと押し込めることができるなぁということ。

市川演出の中には「ふとした仕草のなかにある意味深さ」みたいなものがいつも隠し味のようにこめられている。しかしそれはこれまで比較的若い思春期を迎えた女の子、もしくは成人間もない女性などの設定の登場人物に多用され、今回のようなベテラン俳優を起用するにはちょっと難しいと思っていたのだがいやはや感心するばかり。

今回の長塚京三、桃井かおり、倍賞美津子など、おそらくは本人たちの演技の型のようなものが出来上がっている俳優陣には、演出、俳優の魅力の引き出し方、コントロール術などは一筋縄ではいかない。普通の演出家ならばおそらくいままで積み上げてきた自信を喪失するだけの作品になってしまうこともあるであろう。ところがミリ単位の繊細な心理描写を、お年頃の男女のようにあっさり演出できてしまうところに市川監督の演出の力が感じられる。俳優自身の力量も実際そうなのだが、各人その演技の艶やかさを十二分に引き出されている。もし未見の方はリアルな熟年の恋愛を垣間見られるという意味でも是非お勧めする。

当初はサントリーのCMだったものを期待に答え市川監督が長編につむぎ上げた作品。

第21回 モントリオール映画祭で最優秀監督賞を受賞しています。
[PR]
by imao001 | 2008-11-15 00:14 | レビュー