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by imao001

映評「羅生門」デジタル復元版

とにかくデジタルリマスター版ということがありがたく、それだけでも見に行く価値あり。
おそらく1億とまでは行かないまでも、5000万程度は楽にかかるであろうリマスター作業の成果が体験できる。私は東京国際映画祭、渋谷のオーチャ-ドホールでの上映を見たため、残念ながら最高の環境とは言い難いもののその鮮やかな映像と音声の修復加減は充分に体感できた。日本人として見ておくべき映画ではあると思う。

ちなみに“デジタルリマスター”とは元々の映画のネガを使って埃、カビ、プリント時のミスなどで出来た傷や損失を可能な限り復元していくことである。今回は音声にもかなりの修正が加えられているらしく、舞台挨拶では当時「羅生門」のスクリプターを担当されて、今年の東京フィルメックス審査委員長を務める野上照代さんが壇上に立ち「台詞が聞こえづらいといわれる黒澤映画だけれども、驚くほどはっきり聞こえるようになっている」とおっしゃっていた。実際その映像のクリアー度合いはまさに撮りたて状態である。いやはや1本の映画制作費ほどの金額をかけただけはある。是非その目で確かめてください。

「羅生門」の大まかなストーリーは、平安時代の高名な盗賊、多襄丸(たじょうまる)があるとき侍夫婦と出会い、多襄丸がその妻に手を出したところから始まる。夫は後ほど死体で見つかるのだが、この殺人事件の聞き取りが検非違使庁で行われるのだが、言い分が証言者によってまったく食い違い、結局なにが真実なのかわからないでいる…

もう今更言うまでもないが日本の巨匠であることに異論は挟まないし、この「羅生門」もヴェネチアで金獅子賞を受賞するほど優秀な映画ではある。しかし今回ははじめてみてから15年ほど経っているからか初見ほどの感動はなかった。小難しく考えることも出来る物語だし、以前の自分であれば深読みしていたであろうそれぞれの証言や映像なども、今ではあるがままを受け取る素直な映画の見方になっていた。感動とか衝撃度は薄れていたかもしれないが、それでもやはり色濃く残る黒澤監督のタッチやリアリズムなどは繰り返しになるけれども“日本人だったら黒澤作品見ておかなければ”ぐらいの思いを抱かせた。皆さんもこの文章で少しでも黒澤作品に興味を持ってもらえたらこれ幸い、と思うんだが、ま、映画ってやっぱり個人の好みなのでねぇ。

ちなみに、どうでもいいことではあるのだがクレジットでこの映画の助監督が加藤泰というのが分かり「加藤泰のあの執拗なるアングルや撮影方法はこの辺にも由来があるのか~…」などと、変な感慨があった。



角川映画 「羅生門」 デジタル復元版 サイト
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by imao001 | 2008-10-25 16:08 | レビュー